〜Special Short Story〜 |
「サムシング・ブルー」 |
|
年度末が迫り、残業や休日出勤で、ショッピングを楽しむ暇すらない。
疲れはてて深夜に帰宅し、ベッドに倒れ伏していたら、控えめなノックとともに妹が部屋に入ってきた。
「お姉ちゃん? 寝ちゃった?」
「んー」
「買ったまま、箪笥にしまいっぱなしだったブラがあるんだけどさ。いま、してみたら、ちょっときついんだよね。私、太ったのかなあ」
「んー」
「お姉ちゃんなら、たぶん合うと思うから。よかったら使って。ここ置いとくね」
「んー」
夢うつつで返事した。
翌朝、目覚めると、テーブルのうえに澄んだ青色のブラジャーが置いてあった。前夜のあやふやな記憶を掘り起こしつつ、ブラジャーを手に取った瞬間、時計が目に入った。一気に覚醒した。急がないと遅刻だ。
その週末は土日とも、なんとか休みをもぎ取った。ひさしぶりにゆっくり街を歩く。
雑貨や安価な化粧品を売っている店で、鮮やかな青いマニキュアを見つけた。妹にもらったブラジャーの色と似ている。たまには休日にマニキュ
アを塗るのもいいかと思い、購入することにした。
買い物でいくらか気分転換でき、夕方、軽い足取りで家に帰った。早速、青いマニキュアを手足の爪に塗る。乾くのを待って、青いブラジャーをつけてみる。肌の色によく映える。わざと、Tシャツにジーンズというあっさりした服に着替えた。爪と、見えないけれどブラジャーだけが、美しい青なのだと思うと、うきうきしてきた。
「お姉ちゃん、今日、お父さんとお母さんはデートだって。夕飯どうする?」
「そうだね、二人でどっか食べにいこうか」
「うん」
とうなずいた妹は、マニキュアに気づいた。「うわあ、その色きれい。ほら、結婚式のとき、青い物を身につけるといいって言うじゃない? なににしようかなあと思ってたんだけど、そのマニキュアを塗ろうかな」
「貸してあげてもいいけど、爪の青い花嫁さんなんて、どうかしら」
私と妹は笑いあいながら、ご飯を食べに出かけた。新しい生活をはじめる妹の幸せを願って、サイズの合う青いブラジャーをプレゼントしようかな。
私は晴れやかな気持ちで、考えをめぐらせた。 |
|