〜Special Short Story〜 |
「幸せを願う色」 |
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ひさしぶりに有休を取って台湾を旅していたら、店先に並んだ下着が赤ばかりだったので、驚いた。華やかを通り越して派手だ。
店のひとに、つたない北京語と筆談で、「赤い下着がはやっているのか」と聞いてみた。「旧正月用の下着です。新しい年の幸せを願って、強運を呼びこむ『赤』を身につけるんです」と教えてくれた。
なるほど、と思った。赤はなんとなく生命力を感じさせる色だ。一年がはじまるにあたって、ふさわしい。
まぶしいほど鮮やかな赤い下着の波を見るうちに、妹へのおみやげにいいかもしれないと思えてきて、買うことにした。妹はちょうど、学生時代から五年つきあったひとと別れたところだった。べつに、相談を受けたわけでも泣いているところを目撃したわけでもないが、一緒に暮らしていれば、そういうことってなんとなくわかる。
帰国して、蓋にナスの取っ手がついた小さなかわいい急須や、ヒマワリの種を煎ったお菓子とともに、赤いブラジャーとパンツを妹に渡した。「わあ、すごい色」と妹は笑った。「でもきれいだね」
お正月に身につけるんだって、と説明したけれど、結局それきりになった。たまに洗濯機のなかに見かける妹の下着は、これまでどおりパステル調のものばかりだった。
半年以上が経って、冬の気配が感じられる季節になった。妹に、「お姉ちゃん最近、はりきってるでしょ」と言われた。会社で新しい企画に取り組んでいるところだったが、家で仕事の話などしたことはない。「なんで」と聞くと、「黒いブラをよく使ってるから」と言う。そうか、と思った。無意識だったが、気持ちを引き締めたいときには、たしかに黒を選んでいたかもしれない。
クリスマスにも残業し、やれやれという気分で帰宅する。妹はまだ帰っていなかった。「デートじゃないの?」と、リビングでテレビを見ていた母は、どこか安心したように言った。
元日の朝に、両親と妹と食卓を囲み、お雑煮を食べた。お屠蘇をついでくれた妹が、いたずらっぽく言った。「お姉ちゃん、わたし今日、あのブラとパンツだよ」。
忘れずに、大切に箪笥にしまっていてくれたんだなと、うれしかった。実はわたしは、おろしたての白いブラとパンツだった。だれも気づいてないけど、紅白姉妹だ。妹と一緒に近所の神社へ歩きながら、晴れ渡った水色の空を見上げた。きっといい一年になる。 |